出張旅費規程の「近距離」でも日当は可能?非課税にするための条件と税務リスクを解説|難波の税理士【山本たかし会計事務所】クラウド会計・相談無料
- 山本たかし会計事務所TOP
- コラム
- 会計業務
- 出張旅費規程の「近距離」でも日当は可能?非課税にするための条件と税務リスクを解説
2026/10/13会計業務
出張旅費規程の「近距離」でも日当は可能?非課税にするための条件と税務リスクを解説
役員や従業員が業務で移動する際、社内に「出張旅費規程」を整備していれば、支給する出張手当(日当)や宿泊費を非課税(実費弁償)として処理できます。
インターネット上では「出張旅費規程を作れば手軽に節税ができる」といった情報が見られますが、誤った運用をすると、税務調査で「給与」とみなされ、追徴課税を受けるリスクがあります。
特に「近距離の移動」に日当を支給する場合、どのような点に注意すべきなのでしょうか。
本記事では、所得税法や国税庁の基本通達等を基に、適正な運用ルールを解説します。
「何㎞以上を出張とするか」は法令で決まっていない
「出張は何km以上でなければならない」という一律の基準は、所得税法や関連法令では決まっていません。
国の旅費に関する法律(国家公務員等の旅費に関する法律)でも、距離ではなく「公務のため一時その在勤官署を離れて旅行すること」と定義されています。
そのため、「何km以上を旅費規程の対象とするか」は、各企業が実態に合わせて自由に決めることができます。
よくある例として「片道100km以上」などが挙げられますが、一例にすぎません。
自社の事業実態や営業範囲に合わせて、適切な範囲で規程を設けることが認められています。
近距離出張への支給で注意すべき税務上のリスク

法令に距離の制限がないからといって、自宅の近くや、普段の営業エリア内での移動に対して安易に日当を支給すると、税務調査で給与と指摘されるリスクがあります。
国税庁の所得税基本通達9-3では、非課税とされる旅費の範囲について、その旅行に通常必要とされる費用の支出に充てられると認められる範囲内と定めています。
近距離の移動については、以下のケースは税務署から給与と判断される可能性があります。
| ①通常業務の範囲内であるケース | 日常的な営業範囲の周辺、近隣の顧客への定期的なルート営業など、通常業務と区別できない移動にまで日当を出している場合。 |
|---|---|
| ②区別の基準があいまいなケース | 「どこからどこまでが出張か」の基準が社内ルールとして明文化されておらず、その場の裁量で自由に日当を支給している場合。 |
このような場合には、「給与」と判断され、源泉所得税の徴収漏れを指摘されるリスク、また、役員の場合には法人税の損金不算入(賞与認定)のリスクも生じるため注意しましょう。
近距離でも出張として認められるための条件
近距離であっても、適正な旅費規程を運用し、非課税の扱いを受けるためには、要件を満たす必要があります。
① 距離や時間、勤務地外の明確な基準を設ける
旅費規程の中に「片道〇〇km以上」「移動時間が片道〇時間以上」「原則として勤務地(または自宅)から〇〇km以上離れた地点」といった明確な基準を設けましょう。
これにより、通常の営業や日常の外出と明確に区別できるようにします。
② 業務上の必要性と客観的エビデンス
「いつ、どこへ行き、誰と会ってどのような業務を行ったか」を証明できる出張報告書や、アポイントの履歴、交通機関の利用履歴などを必ず残しましょう。
客観的なエビデンスがない場合、架空出張や私的な費用として疑われるリスクとなります。
③ 社内バランスの維持
役員だけが不自然に高い日当を受け取っているなど、社内バランスにも注意しましょう。
役職に応じた段階的な差(例:社長5,000円、一般社員3,000円など)にとどめ、全従業員に対して公平な基準を適用することがポイントです。
④ 同業他社の水準を意識する
日当の金額に法律上の上限はありませんが、同業種・同規模の企業が一般的に支給している水準に照らして「相当と認められる金額」であることを前提としましょう。
社会通念上、高額すぎる日当を設定するのは避けるべきです。
消費税の扱いとインボイス制度の留意点
適正な旅費規程に基づいて支給される国内出張の日当や宿泊費は、消費税の計算において課税仕入れとして扱うことができます。
インボイス制度のもとにおいても、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が可能です。
なお、海外出張のために支給する日当等は、消費税の課税仕入れの対象外です。
また、消費税の課税仕入れが認められる前提は、あくまで「その旅行に通常必要であると認められる」範囲内であり、もし、税務調査において所得税法上の「給与」と判断された場合には、消費税の仕入税額控除も否認されることも留意しましょう。
実態に合った規程づくりと運用が不可欠
旅費規程を適切に活用すれば、経理処理の合理化や、税法上有利な取扱いを受けられるメリットがあります。
ただし、自由に日当を出してよいわけではありません。
社会通念上の金額の多寡、基準の明文化、社内バランス面に留意した旅費規程を置き、エビデンスの保存などをしっかり行うことで税務リスクに備えましょう。

