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2025/10/27会社設立
売上なしの赤字マイクロ法人でも大丈夫?注意点を解説
マイクロ法人を設立すると社会保険料の負担を減らすことができる、と聞きます。
売上なしのマイクロ法人でも大丈夫なのでしょうか?
会計・税法などの側面から注意点を解説します。
売り上げなしの赤字マイクロ法人のメリット
マイクロ法人は、適度な利益を得つつ、個人の社会保険料や税金の軽減を目的として設立される場合が多いようです。
法人税の節税になる
法人税は、利益(課税所得)に対して課税されます。
利益が出ていない場合には法人税はかかりません。
個人事業主の場合、所得が増えると累進税率であることから、所得税が高くなりやすく、法人税率の方が有利になる場合があり、マイクロ法人の設立を考える方が増えます。
また、法人は個人事業主よりも経費の範囲が広いともいわれており(不適切な経費計上は認められません)、役員報酬も経費に含まれ、社会保険料の会社負担分も経費となります。
社会保険料の加入対象になれる、負担を抑えられる
個人事業主の場合、国民健康保険・国民年金に加入しますが、マイクロ法人を設立すると、社会保険の加入対象となることができます。
社会保険は国民健康保険・国民年金と違い、被扶養者が何人いても保険料は増加しません。
被扶養者が多い人はお得といえるでしょう。
また、社会保険料は、給与の額に基づいた「標準報酬月額」によって決定されます。
給与が高いほど社会保険料の負担が増加し、給与が低ければ負担は少なく済みます。
つまり個人事業主で所得が高い場合、国民健康保険・国民年金の負担が重くなりますが、マイクロ法人を設立し、自分の役員報酬を低く設定すれば、社会保険料の負担を抑えることができるのです。
このようなメリットを考慮すると、マイクロ法人の設立はとても魅力的だといえます。
ただし、社会保険料の負担は抑えることができますが、将来的には年金受給額が減ることなど、長期的な影響があることは留意しましょう。
売り上げなしの赤字マイクロ法人の注意点

節税目的だけではダメ
前述のとおり、赤字のマイクロ法人の法人税はかかりません。
社会保険料を抑えることも可能です。
とはいえ、仮装・隠ぺい、不合理な所得の分散は税法においては認められません。
赤字であることで直ちに問題になるわけではありませんが、売上がない、売上が計上される見込みがない場合は「事業」とは呼べないため、税務署に恣意的な租税回避とみなされると税務調査のリスクも考えられます。
法人設立が合理的であるかどうか、会計・税法に関する最新の注意が必要です。
赤字でも決算申告は必要
法人は、その決算期には法人税の申告・納税が必要です。
個人事業主も毎年確定申告を行いますが、法人の決算は所得税の確定申告よりも煩雑で、会計・税法の知識がより必要とされます。
申告書の別表の種類も多く、自分で行うには難しいかもしれません。
税理士に申告を依頼する場合には、税理士の報酬負担も考えておきましょう。
赤字でも納税は必要
法人は、法人税、法人事業税や法人住民税が発生します。
利益がなく、赤字であったとしても、「均等割」の法人住民税は必ず納めなければいけません。
地方によって異なりますが、毎年7万円程度はかかると考えておきましょう。
また、不動産や設備を補修していれば固定資産税が発生します。
機器・設備が150万円以上なら償却資産税(=固定資産税)の対象です。
法人名義で自動車を保有している場合は、自動車税なども課税されます。
その他、適格請求書発行事業者として登録している場合には消費税の負担も必要となりますので注意しましょう。
資金調達が困難
マイクロ法人は、個人事業主が節税目的で設立するケースが多いため、売上が少ない、または売上がない場合には赤字経営となります。
赤字経営の場合、金融機関からの信用が得られず、資金調達をしようと考えても融資が困難である可能性が高くなります。
事業を継続するには運転資金をいかに確保するかが重要です。
決算書の印象が悪く、信用力が低い
金融機関の融資審査では決算書を見て判断することになります。
赤字決算では事業の継続性に疑問を持たれかねません。
返済能力を重視するため、利益を出せない法人に対しては、信用度が低く、融資審査に通りにくくなるでしょう。
出資や援助、補助金や助成金も厳しい
金融機関以外のベンチャーキャピタルやエンジェル投資家についても、成長性や収益性を重視するため、赤字状態では出資・援助を受けることは厳しいと考えられます。
また、補助金や助成金についても、一定の事業実績や売上見込みを要件としている場合が多く、やはり厳しいといえるでしょう。
まとめ
売上なし、赤字のマイクロ法人であっても、税法上の義務はしっかり発生します。
節税のメリットを得るためにマイクロ法人を設立するとしても、事業の実態を伴った運営は不可欠です。
設立する前に、事業計画や資金繰りについてよく検討しましょう。
信用性が担保できる決算書の作成、融資が必要になった際に困らないよう経営していく必要があります。
また、短期的なメリットだけでなく、個人的な老後の生活なども視野に入れて検討しましょう。
節税だけにとらわれることがないよう、法令順守にも注意が必要です。

